ブルゴーニュワインの選び方と基礎知識
フランス東部のブルゴーニュ地方で生産されるブルゴーニュワインは、「ワインの王様」と称されることも多く、ボルドーワインと並ぶ世界で最も有名なワインです。
ブルゴーニュのワインは、ボトルの形状から見分けることができ、なで肩のボトルに入っているのがブルゴーニュワインです。
「ブルゴーニュ地方」とは
ブルゴーニュ地方とは、ボルドー地方と並ぶフランスの二大銘醸地で、世界的にも有名な「ロマネ・コンティ」や「モンラッシェ」などの最高級ワインを生み出している地域です。
また、「エポワスチーズ」や「牛肉の赤ワイン煮込み」など、ワインと一緒に楽しむ食材や郷土料理もよく知られています。
ブルゴーニュ地方では、紀元前600年頃からワイン造りが行われていて、4世紀頃には既に銘醸地としてその名が知られていました。ワインが外交に使われるようになった14世紀後半頃からさらに品質が向上し、ヨーロッパ全土で評価されるようになりました。
よく使われるブドウ
ブルゴーニュ地方では、ほとんどのワインが単一品種のブドウから造られます。ボルドー地方とは大きく異なる点です。
赤ワイン
ブルゴーニュの赤ワインに使われる主な品種は、ピノ・ノワール、ガメイです。それぞれの品種について解説します。
●ピノ・ノワール
ブルゴーニュ地方原産のピノ・ノワールは、冷涼で乾燥した水はけの良い土地に適した品種です。ガーネット色で渋みが少なく、やわらかい酸味と繊細な香りや味わいを引き出します。長期熟成に向いていて、世界最高品質のワインと称される「ロマネ・コンティ」が最も有名です。
●ガメイ
主にブルゴーニュ地方の南部で栽培されている品種で、ボージョレー・ヌーボーの原料として有名です。世界で生産されているガメイ種のうち約60%を、ボジョレー地区が占めています。フレッシュで爽やかなライトボディで、タンニンは控えめ。豊かな酸味と赤系果実やスミレの香りが特徴的で、比較的若いうちに飲むのがおいしいとされています。
白ワイン
ブルゴーニュの白ワインに使われる主な品種は、シャルドネ、アリゴテです。それぞれの品種について解説します。
●シャルドネ
ブルゴーニュ地方原産のシャルドネは、白ワイン用のブドウ品種として世界No.1の人気を誇る高級品種です。冷涼な地域から温暖な地域まで、気候や環境への適応力が高いので、世界各地のワイン生産地でたくさん栽培されています。土壌の特徴や造り手の個性が顕著にあらわれます。ブルゴーニュ地方を代表する白ワイン「シャブリ」の原料として有名。強烈な個性やクセはなく、キリッと引き締まった酸味が特徴です。
●アリゴテ
ブルゴーニュ地方原産のアリゴテは、シャルドネの影に隠れて印象の薄い地味な存在ですが、病害虫にとても強く、ピノ・ノワールやシャルドネなどに適さない土地でもよく育ちます。すっきりとした味わいと上品な酸味が特徴です。スパークリングワインの「クレマン・ド・ブルゴーニュ」にも使われています。
ブルゴーニュ内の各地区の特徴
ボルドーでは各生産者をシャトーと呼ぶのに対し、ブルゴーニュではドメーヌと呼びます。
ブルゴーニュワインの産地は、大きく分けて6つの地域に分類されます。最も北に位置するシャブリ地区、コート・ドール(黄金の丘)と呼ばれるエリアに位置するコート・ド・ニュイ地区、コート・ド・ボーヌ地区、その南にはコート・シャロネーズ地区、マコネー地区、ボージョレー地区があります。
●シャブリ地区
現在シャブリ地区がある場所は、1億5千万年前には海底だったため、今も石灰質の土壌です。シャブリ地区の白ワインには、ミネラルの風味がしっかりと出るのが特徴です。
今から約900年前、シャブリ村にあるポンティ二ー修道院がシャルドネ種のブドウを栽培して、ワイン造りを始めたのが「シャブリ」の起源だと伝わっています。
●コート・ド・ニュイ地区
「ロマネ・コンティ」や「ジュヴレ・シャンベルタン」といった、世界最高級の赤ワインの産地のひとつとして知られています。暑い夏の暑さと厳しい冬の寒さ、昼夜の寒暖差が大きい気候です。長期熟成に適した滑らかで程よいタンニンと、複雑な香りを持つ仕上がりとなります。グラン・クリュが密集している区画は、グラン・クリュ街道と呼ばれていて、観光名所としても有名です。
●コート・ド・ボーヌ地区
泥灰質や粘土質の多様な土壌で、「モンラッシェ」に代表されるようなシャルドネ種から造られる、ふくよかで個性豊かな最高級辛口白ワインの生産地として知られています。また、赤ワインも「コルトン」など有名な産地があります。軽やかな飲み口で、コート・ド・ニュイ地区のワインよりも手軽に楽しめます。
●コート・シャロネーズ地区
コート・シャロネーズ地区は、コート・ド・ボーヌ地区に近く、土壌や気候、ブドウの栽培、ワインの醸造方法までよく似ています。ブドウ品種はピノ・ノワールやシャルドネが中心で、地中海性気候の影響を受ける南のエリアでは、ガメイやアリゴテも栽培されています。最も有名なのは、メルキュレ村の赤ワインです。
●マコネー地区
マコネー地区では、石灰質でミネラルが豊富な土壌で、シャルドネを中心に栽培されています。村名AOCの付いた高品質な白ワインと、カジュアルで飲みやすい赤ワインが生産されています。全体の7割を白ワインが占めていて、辛口の早期熟成タイプが主流です。
●ボージョレー地区
ボージョレー地区の北部は、主に花崗岩からなる土壌の丘陵地帯で、傾斜のある畑が広がっています。南部は粘土石灰岩と砂岩が中心の肥沃な土壌で、平坦な場所が多いです。赤ワインやロゼワインのボージョレ・ヌーボーが有名ですが、白ワインもわずかながら造られています。
ブルゴーニュワインの選び方
ブルゴーニュ地方には、個性豊かで魅力的なワインがたくさんあります。しかし、種類が多すぎて、どうやって選べば良いのかよくわからないという人もいると思います。
土地で選ぶ
ブルゴーニュでは、「クリマ」と呼ばれる畑の区画ごとに格付けが決まっています。格付けは、グラン・クリュ(Grand Cru 特級畑)、プルミエ・クリュ(Premier Cru 1級畑)、村名クラス(Communales)、地域名クラス(Regionales)の4つに分かれています。特級畑のグランクリュは全体のわずか1%、1級畑のプルミエ・クリュでも全体の11%しかありません。
ボルドーとは異なり、ブルゴーニュでは1つの畑を複数の所有者が管理していることがほとんどです。1つの畑に数十人の所有者がいるのが一般的で、ロマネ・コンティのように、独占して畑を所有しているケースは珍しいと言えます。
ラベルには「〇〇地区・〇〇村・〇〇畑・〇〇区画で〇〇さんが造った」という情報が書かれています。ルロワ、ルイ・ラトゥール、クロード・デュガ、ジョセフ・ドルーアンなどが特に有名なドメーヌです。
当たり年で選ぶ
辛口評論家として有名な、ロバート・パーカー氏が96点以上(稀に見る出来栄え)をつけた、いわゆる「当たり年」に注目して選ぶのもひとつの目安となります。
例えば、コート・ド・ニュイ地区は 2015年、2010年、2005年、コート・ド・ボーヌ地区は2005年、ボージョレー地区は、2009年が該当します。また、2014年は白全般が良かったとされています。
まとめ
ブルゴーニュワインのラベルには、細かい情報がびっしりと詰まっています。慣れるまでは選び方が難しいと感じるかもしれませんが、地区だけではなくどの区画で誰が造ったのかまで読み取って選べるようになると、ブルゴーニュワインがさらに楽しめます。